2019月8月8日
こんにちは、シナプス代表の竹内です。
前回「薩摩錫器と種子鋏(1)」の続きです。
種子鋏
薩摩錫器の次は、種子鋏です。日本初の国産の鋏と言われています。
種子鋏は、2017年4月の種子島出張時に購入しました。もっと以前から興味はあったのですが、種子鋏は売っている店舗が少なく、鹿児島県本土では仙巌園の中の売店にあると聞いて、見に行ったことがありました。ガラスケースの中に置かれた種子鋏を見ていて、すぐにでも買うつもりだったのですが、同行した妻の同意を得ることができずその場は断念。その数年後の2017年、妻のいない出張時に、本場の種子島で購入しました。
種子鋏を制作する工房も、今はもう3件くらいと聞いています。私が買ったのは、梅木本種子鋏製作所さんの鋏です。種子鋏を買ったお店の店主によると梅木さんは、種子鋏の伝統的な制作技法を守った最後の名工/牧瀬さんを師匠とするただ一人の職人さんらしいです。もうそんな背景を聞けば、買わざるを得ません。でも価格は確か5千円もしないくらい。もちろん安いものではありませんが、同じものが一つとしてない、完全手作りの工芸品としては破格に安いです。なかなか紙を切る機会もないのですが、自宅の机の引出しに置いて、時折手にとって、鉄の鈍い輝きと重みを楽しんでいます。
種子鋏と100均ハサミ
見ても満足できる、実用の道具である種子鋏。日本刀にも通じると言われる工法で作られ、鍛えられた刃物です。切れ味も良いです。すっと切れる味わい、指に適度に伝わってくる抵抗力。「これが日本刀の切れ味かー」などと、妄想とともに悦に浸ることができます。
そして同じ引出しにある、100均で買ったハサミで同じ紙を切ってみます。すると、普通によく切れます。これはこれで。まっすぐも曲線も、よく切れます。また指に当たる部分がプラスチックなので、痛くないです。種子鋏は全て金属なので、ちょっと指が痛いです。
実用上の重要な指標である「切れ味」では、種子鋏も100均ハサミも、実際違いは分かりません。あくまで主観ですが。種子鋏は、切れば切るほど刃が研がれて、切れ味が増すとも聞きます。ステンレス製の100均ハサミでは、そうもいかないかもしれません。ただ100均ハサミは安いので、もったいないはさておき、使い捨て感覚でも財布は痛みません。
さて、愛してやまない薩摩錫器と種子鋏なのですが、薩摩錫器と真空断熱タンブラー、そして種子鋏と100均ハサミ。つまり伝統工芸品と大量生産の規格品。両者を比べて、事業としては伝統工芸品は分が悪いな…と考えざるを得ませんでした。残念なのですが。
(つづく)