2021月9月6日
こんにちは、シナプス代表の竹内です。
ちょっと前ですが、SF小説/三体の日本語版・全5巻が完結しました。新聞の書評で関心を持って去年から読んでいたのですが、難解で意味不明・登場人物の名前が覚えられない・そして超長編…にも関わらず、ワクワクしながら読み切ってしまいました。
ネタバレにならない範囲で紹介すると、舞台は中国で、文化大革命の騒乱期から始まります。暗く陰鬱な感じで、ここで読了を諦めるか否かの、まず第一関門があります。ここをなんとか乗り越えると、話の時間軸が現代になって少し興味が高まってきます。ここではネットゲームのバーチャル世界が重要なカギを握るのですが、そこに登場する歴史上の人物が、時間軸・空間軸がひっちゃかめっちゃかです。始皇帝とアリストテレス、アインシュタインが出会って話をするとか。そして、銀河英雄伝説のヤン・ウェンリーもちょっと引用されたり。
そんな世界観の理解も難しいのですが、一番困ったのは登場人物が中国名なので、名前が読めず覚えられず。そして「難解」の理由の一番大きなところは、物理学、特に量子力学の世界観がベースになっているところです。三体は宇宙もののSF小説で、結局宇宙人が攻めてくるのですが、光速を超える定番の”ワープ”は出てきません。少なくとも現代の物理学では理論的にあり得ないからです。なので宇宙人の襲来は400年後です。高度に文明が発達した宇宙人の宇宙船は、光速までは届かないものの、かなり高速です。しかし一気に加速すると乗員が押しつぶされてしまうので(急加速した自動車で体がシートに押し付けられる、あの体験です)、1年くらい掛けてゆっくり加速し、また1年くらい掛けてゆっくり減速します。なんか間が抜けていますが、これがリアルな物理学の世界です。そういったSFだけど全くの空想モノではなく、物理学に基づく制約などが緻密で面白いです。
三体は全5巻ですが、1巻だけでもいったん完結し、十分楽しめます。しかしきっと2巻目を手に取るでしょう。そして5巻まで読むと、「光速はなぜ秒速30万キロなのか?」「世界はなぜ3次元なのか?」といったところまで踏み込んでいきます。
全巻通して読んでみて、たぶん半分も理解できていないと思います。それでも面白かったというところも不思議な小説です。SF好きにはおすすめです。