2022月8月22日
こんにちは、シナプス代表の竹内です。
昔の職場で印象に残っている上司がいます。あらかじめフォローしておくと、ある銀行からの出向者で30歳代前半とまだまだ若手、県外から鹿児島への単身赴任、2-3年すれば元に戻れるからそれまでの我慢…というような、モチベーション維持にはちょっと大変なのかもなという立場の上司でした。
当時の会社は、トップダウンで新規事業を立ち上げたばかり。その上司は、これまでの経理業務に加えて新規事業の企画面を統括する部署を任されていて、私はその一員。新規事業の現場職員は増えても、企画や事務を担当する職員は増やしてもらえず。既存事業に新規事業が加わりなかなかハードな職場で、「この仕事、いつ終わるんだろう。」とまさに毎日目が回る状況です。
そんな状況での上司の口ぐせは「うまくいかない。」でした。事業を軌道に乗せるために悪戦苦闘する現場が出してくるアイデア、またはトップの指示などに対して、だいたい「うまくいかない」と声に出して予言します。もちろん自分の部署内で話すだけで、当の本人に面と向かっていうような愚かなことはしないです。またもちろん、あてずっぽうに「うまくいかない」と言っている訳ではないです。私たち部下に対して、うまくいかない根拠をしっかり説明してくれます。そして実際に残念ながら、うまくいかないことが多かった…。その結果を見て上司は「ほらね。」と。「だいたい分かるんだよね。」と。
さて、こんな未来を見通せる上司は、有能な上司でしょうか?
銀行員ということもあり数字は得意です。
(計算間違いをよく見つけてもらったので、それはありがたかった…。)毎月、新規事業の損益とキャッシュフローをまとめて将来予測の計算をするたびに、「あと○ヶ月で終わりだな。」と予言をします。この上司と一緒に仕事をしたのはずっと昔のごく一時期でしたが、余命わずかと予言された新規事業は、苦労をしながら今も続いています。残念?ながら、この予言は当たらなかったようです。
なぜこの予言ははずれたのか?
それは、現場の人たちが頑張ったからです。預金通帳残高がみるみる減っていくなか、時には現場責任者の給料支払いを遅らせてとか、諸々支払ったあとの来月末の残高が二十数万円になりそうでもしかしたらゼロに…とか、まさに冷や汗ものの綱渡りをしながらも乗り越えていって、今に続いています。「傍観者のくだらない予言などはずしてやる!」という反骨心も、いい燃料になりました。ひとつ悔しいのは、新規事業の立ち上がりを見せつける前に、その上司が銀行に帰っていったことです。元気かな?
だけどこの失敗の予言者は、実は自分のなかにもいるぞという自覚があります。「うまくいかないかもな」とよぎる心です。ポジティブな性格でもないので、自分の中の失敗の予言者はちょいちょい顔を出します。「うまくいかない」と思うことは、とても簡単でとてもラクです。どうせうまくいかないことであれば、敢えて苦労したり、行動したりする必要がなくなるんですから、ラクです。
自分の中の失敗の予言者に気付かせてくれて、そして失敗の予言を乗り越える経験をさせてくれた年下の上司。今思えば、本当に貴重な機会をくれました。本当に!