2025月1月8日
こんにちは、シナプス代表の竹内です。年末にインフルエンザに感染し、さらに妻にもうつしてしまった結果、その帳尻合わせで妻の正月休みが消滅するという事態に陥りました。自分だけが休みを満喫するわけにもいかず、ひとり静かな正月休みを過ごすことになりました。
そんな中、プライムビデオで目に留まったのが映画「PERFECT DAYS」でした。普段はSFやアクション映画を見ることが多いですが、特に予定のないこのタイミングだからか、再生ボタンをクリックしました。この映画は、役所広司さん演じる主人公の日常を淡々と描いています。一見すると退屈にも思える内容ですが、いつの間にかその世界観に引き込まれていました。主人公は、トイレ清掃という仕事を淡々とこなしながらも、日々の些細な変化を見つけ楽しみ、古いフィルムカメラでその一瞬を記録したりていします。何気ない日常の中にある喜びや美しさを見つけ出す姿は、観ているこちらに、自分の生き方を問われているようでした。
この映画を観て思い出したのが、玉村豊男氏の著作「今日よりよい明日はない」です。このタイトルに込められた意味もシンプルなようで難しい。このフレーズは「毎日を満足して暮らせれば、それで十分」というポルトガルの言葉に由来するそうです。現代社会では、より良い未来を求めて成長や競争に追われがちですが、その過程で見失いがちな「今この瞬間」の豊かさを改めて考えさせられます。
「PERFECT DAYS」の主人公も、「今日よりよい明日はない」の言葉を体現しているように思います。彼はただ日々を漫然と過ごしているわけではありません。トイレ清掃の道具を自作したり、日々の生活を丁寧に積み重ねる姿は、彼自身が自分の毎日を能動的に生きている証です。
しかし、同時に考えさせられるのはリスクへの対処です。映画の中の主人公は独居であり、収入も決して多くない様子です。年老いたり、病気になったらどうするのか、という現実的な不安が頭をよぎりました。「今日よりよい明日はない」とはいえ、健康を損ねた状態でこの心境を維持するのは難しいでしょう。ここで、リスクに備える一つの答えとして「会社」や「コミュニティ」の存在があるのかなと思いました。個人では対処しきれない困難を、組織や仲間と支え合うことで乗り越える。そうした人との繋がりや社会の仕組みもまた、日常の豊かさの一部なのかもしれません。
結局のところ、「今日よりよい明日はない」という言葉の真髄は、未来に対する、身の程を超えた過剰な期待と豊かさを手放し、目の前の今日を大切にすることにあるのでしょうか。そしてその「今日」をより良くするためには、日々を丁寧に生きることと、共に支え合う人々との繋がりが鍵となるのではないでしょうか。
静かな正月休みの中で出会った映画と本が、そんなことを教えてくれたように思います。