社長ブログ

損な判断

こんにちは、シナプス代表の竹内です。
飲み会でのたわいない雑談や、また面談のようなやや形式張った場での会話などで、たまにですが相手のする話の中に「それって損じゃないのかなあ…」と思うことがあります。その場の短時間でのやりとりなので、そんなに断定的に言えることでもないんですが。そんな話を、飲み会の場で先輩経営者にしたところ、「認知行動療法」という心理学の分野を教えてもらいました。

あくまで私の主観による損得の見立てなので、本人や第三者の視点を含めて、決して普遍的な話でないことは前置きをしておきます。「それって損じゃないのかなあ…」と思う一例は、こんな感じです。
社員面談でたまに「言っても無駄だから」「やっても無駄だから」という考えを聞くことがあります。このフレーズが出る経緯は、「○○したほうが良いと、ずっと前から思っていた(でも言ってもいないし、やってもいない)。」という言葉から始まり、竹内から「だったらそのとき言えば(やれば)良かったのに!」と伝えると、出てきます。そして「無駄だから」の原因を掘り下げていくと、過去に上長に何かを提起して、それが拒否されたという経験にたどり着きます。立場が異なれば感じて受ける強さも異なるとは思いますが、その「無駄」の信念に至らしめた原因は多くの場合、拒否という判断に至った、上長なりの正当な理由があるように思われました。そういう意味では拒否の判断そのものより、拒否理由の共有を含めた本人-上長間のコミュニケーションに課題があったのかもしれません。
ただこの上長の対応の正当/不当に関わらず「無駄だから」志向は、本人にとってとても損な判断に思われてならないです。その時の気持ちとして分からないこともないですが、ずっと引きずってしまうのは、やっぱり損ではないかなと。

そこで冒頭の「認知行動療法」ですが。「療法」というとたいそうな感じを受けます。もちろん医師によるメンタル面の治療法として確立されているので「療法」で間違いはないんですが、敢えてライトな感じで解釈すると、自分の考え方のクセをより生きやすい方向に修正していく…その心掛けともとらえました。その認知行動療法のなかで「自動思考」というキーワードがあります。自動思考とは、ある体験をしたときに、本人の意志に関わらず反射的に生じる考え・思考のことです。
さっきの「無駄だから」に自動思考を当てはめると、こんな感じになります。
(1)上長に提案した。…事実
(2)その提案を上司に却下された。…事実
(3)上長は自分の提案を聞いてくれなかった。…感想(認知)
(4)上長は自分の意見全てに関心なんかない。…自動思考
(5)だからもう何も提案しない(提案しても無駄)。…損な判断(竹内主観)
客観的に見れば上長は、その提案に限って却下したのみで、その人の全ての提案を拒否しているわけではないです。ましてやその人そのものを否定しているわけでもないです。可能性としてですが、上長とその本人の不仲などで全拒否の場合もあるでしょうけど、私個人の経験では、それほどなケースに出会ったことはないです。いずれにしろこの自動思考の結果としてなされる「だからもう何も提案しない」は、本人にとっても(会社にとっても)マイナスしか生み出しません。自分で自分に、行動しないことの正当性を与えるからです。

感想(認知)と自動思考は、けっこう奥深い心理的な課題です。自動思考は悪いことではなく、人間が獲得した所与とも言うべき心理的な特質です。良い方に変えることができれば、大きな力になります。前記の例でいけば、自動思考で「上長は自分の意見全てに関心なんかない」ではなく、「ではどうしたら上長を納得させられるだろうか」というチャレンジの自動思考ができれば、とても得な判断になります。自分の仕事の成果につながるし、周りから「あいつやるな!」という信頼にもつながります。何より自分自身がやりがいを感じられて、日々が充実します。

認知行動療法には、この自動思考や認知のクセを良い方に見直していく手法があります。私の聞きかじり程度ではその実践は難しいですが、一つの考え方として「今のこれって自動思考?」と問い直す、一呼吸の余裕を持つようにできれば、ちょっとはいい方向に行くかもなと思いました。何かしらの体験をして、そのとき自動思考的に生まれた感情と行動判断は、自分にとって損か得か?を考える余裕です。その一瞬の感情的な好き嫌いの判断にとらわれずに、ちょっと一呼吸を置いて、中長期の損得判断を考える時間を持つ。そして次の行動を決める…です。

そんな簡単ではないですかね??